マリアン・アンダースン
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トスカニーニに「100 年に1 人の声」シベリウスに「完璧な表現者」と絶賛されたアメリカを代表する黒人クラシック歌手・マリアン・アンダースンと共に過ごした伴奏者が綴る貴重な回想録。
母国アメリカでは国民的歌手でありながら、日本ではマリアン・アンダースンの素顔を知る本が殆どありません。この本は、彼女が母国で有名になるきっかけとなった、1930 年代のヨーロッパ、南米、アメリカでの演奏旅行の出来事を、伴奏者のピアニスト・ヴェハーネンが自らの記憶をもとに綴った回想録になります。
シベリウス、ショスタコーヴィチ、トスカニーニやワルターとの交流、ソヴィエト政権下やスペイン内戦前夜の演奏会、パリ・オペラ座での公演……そして米国史に残るリンカン記念堂で行なわれた75000 人野外コンサートの感動的なシーンで幕を閉じます。歌を通じて人種の壁を乗り越えたマリアン・アンダースンの心の内も織り交ぜながら、身近にいた音楽家が繊細な筆致で綴ります。当時の貴重な写真を多数掲載!
★マリアン・アンダースン(1897-1993)は米国フィラデルフィア生まれのコントラルト(アルト)歌手で、黒人クラシック歌手の先駆者でもあります。人種差別のため、音楽学校の入学を拒否されるなど様々な苦労を重ねますが、ザルツブルクのコンサートでトスカニーニから「100 年に1 人の声」と絶賛され、ヨーロッパで一躍その名が知られるようになり、米国に戻ると根強い人種偏見と闘いながら1955 年に黒人歌手として初めてメトロポリタン歌劇場に出演します。 また、アイゼンハワーやケネディ大統領の就任式典で国歌を独唱するという大役も務めます。黒人霊歌「深い河」は彼女の代表曲であり、その独特の暗く深い響きをもつ歌声は多くの人々に愛され続けています。
《目次》
本書について 石坂 廬
プロローグ
第1章:北欧の国々
北欧デビュー
シベリウスとの出会い
フィンランド演奏旅行
刑務所でのチャリティコンサート
第2章:ヨーロッパおよび南アメリカ歌の旅
ヨーロッパツアーのはじまり
ソヴィエト政権下のコンサートツアー
パリで大成功
イタリア皇太子妃からの招待
トスカニーニからの賞賛
レッスンやプログラム作りあれこれ
悲劇性を帯びた歌曲の演奏
三つのダイヤモンド
スペイン内戦前夜のコンサート
南米大陸公演ツアー
第3章:アメリカ合衆国
旅先でのマリアン
敬愛する母
人種問題
リンカン記念堂コンサート
エピローグ
マリアン・アンダースンについて 石坂 廬
訳者あとがき
人名索引
《著者・翻訳者略歴》
コスティ・ヴェハーネン(Kosti Vehanen)
1887 年フィンランド・トゥルク生まれのピアニスト、作曲家。
1905 年から1910 年までヘルシンキ音楽学校(現シベリウス音楽院)に学ぶ。
北欧や英国での主要オーケストラとの共演を含めて生涯で3000回を超えるコンサートで演奏したが、マリアン・アンダースン、アイノ・アクテ、マイッキ・ヤルネフェルトなどの20 世紀前半期の重要な歌手たちの伴奏者としても活躍した。1957 年没。
石坂 廬(いしざか いおり)
1946 年関東州大連市(現中国東北部)生まれ。早稲田大学卒業。日本火災海上保険に32 年間勤務の後、笹川平和財団等に勤務。
小学校よりコーラスを始め、早稲田大学グリークラブで男声合唱を行なう。これまでに文化交流で世界各国の合唱祭や演奏会に男声唱団員として参加。
現在、稲門グリークラブ、日本ラトヴィア音楽協会、六声会の各会員。
訳書に『悲しみと希望:ラビン首相の孫が語る祖父、国、平和』(ノア・ベンアルツィ・ペロソフ著・ミルトス)『トスカニーニ 身近で見たマエストロ』(サミュエル・チョツィノフ著・アルファベータブックス)がある。
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