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済州島 海女(チャムス)の民族誌 「海畑」という生活世界
¥2,750
済州島出身の著者が、自ら海女(チャムス)になり、海女漁(ムルジル)を習い、参与観察することによって記録した海女たちの生きかたと、その文化・習俗に迫った労作!! 泉靖一著『済州島』の世界と現在とをつなぐ研究成果となる一冊。日本と韓国の間では海女文化交流が長年続いており、日本の読者もその関心が高い。 2016年、「済州(チェジュ)の海女文化」はユネスコ人類無形文化遺産に登録。 《目次》 第1章 研究の目的と方法…研究の目的/研究の背景と方法 第2章 済州チャムスの歴史と社会的コンテキスト…食糧獲得から賦役労働まで/現金所得と抵抗/沿岸漁業制度の定着/市場と道具の変化/チャムス人口の減少/チャムスの呼称 第3章 村の社会的背景…村の風景/村の歴史/生業/社会組織/村の神々と儀礼 第4章 沿海集落の共同漁撈…素潜り漁/海洋資源の社会的特性/海藻の共同採取/海洋資源の保護と占有 第5章 チャムスグッの儀礼…儀礼の社会文化的な地形/海洋農耕の儀礼/伝統の政治/古い権利 第6章 海岸の開発と日常との社会関係…抵抗と葛藤の社会的ドラマ/重層的な社会関係/互恵的な交換と分配 第7章 むすび…資源の権利と共生関係/持続的な生活方式の戦略 《著者・翻訳者・監修者略歴》 アン・ミジョン 1969年済州生まれ。漢陽大学文化人類学科博士課程修了。2008年に国立民族学博物館外来研究員、現在、韓国海洋大学国際海洋問題研究所HK(人文韓国)助教授。東アジアの「海洋文化と移住者」(在日、釜山の華僑、サハリン永住帰国者など)に関するいくつかの論文を発表しており、2012年の日韓漁業文化を比較した論文(「海洋の危険談話やライフスタイルの権利」済州島研究Vol.36、2011)で済州学会から学術論文賞受賞。 キム・スンイム 1970年済州生まれ。済州大学通翻訳大学院修士課程修了。同大学政治外交学科博士課程修了。現在、済州大学通翻訳センター特別研究員。韓国語への翻訳で『戦争と平和』(猪口邦子)、『鳥羽・志摩の海女』(海の博物館)、『済州の物語』などがある。 小島 孝夫(こじま たかお) 1955年、埼玉県生まれ。筑波大学大学院環境科学研究科修了。成城大学文芸学部教授。論文「島渡りする海女」、旅の文化研究所編『旅の民俗シリーズ1 生きる』(現代書館、2017年)、編著『平成の大合併と地域社会のくらし―関係性の民俗学』(明石書店、2015年)、『クジラと日本人の物語―沿岸小型捕鯨再考』(東京書店、2009年)、共著『日本の民俗1 海と里』(吉川弘文館、2008年)などがある。
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錬金術のイメージ・シンボル事典
¥4,400
好評のケンブリッジ大学版、初版から7刷の「読む事典」! 錬金術とは自然科学を生み出した元であり、哲学・思想・文学にも多大な影響を与えている。錬金術における謎めいて難解な象徴やイメージを錬金術書にとどまらず、貴重な図版50 点を含め、チョーサーから、シェイクスピア、ベン・ジョンソン、ミルトン、さらにはナボコフなどの現代作家にまで及ぶ文学作品の引用を通して鮮やかに浮き彫りにしている。優れた参照・参考文献に送られるOutstanding Reference Work Award を受賞するなど研究書における基本図書である。 「chemical wedding 化学の結婚」 錬金術は、エデンの園における堕罪の際に人間は自身の内部で分割され、2 つの性に分離されており、人間の内にある対立する力が一致・調和される時にのみ、完全なるアダムの状態を取り戻すことができるというヘルメス主義の観念に基づいている。このような普遍的な男性の力と女性の力の結合は、物質的世界における病だけではなく、分離した魂の苦痛をも癒すことができる第3 の物質ないしは効力を生み出す。形而上学的に言えば、化学の結婚とは、純粋なる愛(子供、「石」)を生み出すための、創造の意志あるいは力(男性)と知恵(女性)の完全なる結合である。この「石」の創造は、常にある種の犠牲ないしは死を伴う。愛し合う猛禽(→図6)は交尾するが、同時に互いをむさぼり喰らい合う(→bird,strife)。『哲学者の薔薇園』の6 番目のエンブレムは、棺に横たわる結合した恋人たちを描いているが(マクリーン『薔薇園』39)、ミューリウスの『改革された哲学』の6 番目のエンブレム(エンブレム第2 集)で表現されている恋人たちは、その両側にサトゥルヌスと、大鎌を持った骸骨が立つ、ガラスの棺に入れられている(図10)。結婚における死は、結合前の初期の分化された状態の消滅を象徴するとともに、コアグラ(凝固)つまり結婚の祝いの時が、即座にソルウェ(溶解)すなわち死の嘆きに変質されてしまうことも伝えている。多くのテキストがソルウェとコアグラは同時に起こると明言している…。 《著者・翻訳者略歴》 リンディー・エイブラハム 本書執筆時はニューサウスウェールズ大学英語学部博士研究員。錬金術ならびにその文学への影響を研究し、多くの著書、論文を発表している。本書のほかに、アーサー・ディーの〈化学の束〉』、『マーヴェルと錬金術』などの校訂本や著書がある。