フルトヴェングラーのコンサート 解読・全演奏記録《叢書・20世紀の芸術と文学》
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本書は、判明している限りの膨大な演奏会の記録データを集計し、さまざまな角度・観点から分析し、フルトヴェングラーの人間性にまで迫ろうというものだ。なぜ、そんな面倒なことをするのか? その答えは、この国のクラシック音楽評論界に対する筆者の「疑問」というか「怒り」にある、ということに尽きる。この国の業界では、特に1960年代から1970年代、演奏家に対しレッテルを貼り、「決めつけ」を行なっていた。たとえば、「フルトヴェングラーはマーラーの交響曲を振ったことがない。」情報に乏しかった我々は、当時これらのレッテルを無条件に信用していた。
しかし、これらの多くが事実と違っていたことは、その後ネット社会の発展とともに次々と証明されている。そうなったのは「レコードのみの情報で演奏家を判断するこの国の業界の体質」が原因である。この体質は現在でもなお続いていると言えよう。もちろん、レッテルを貼ったり決めつけたりしたほうがレコードを売りやすいのだから、営業上致し方なかった面もある。そこは否定しない。でも、時代は変わったのだ。
《目次》
まえがき
Ⅰ 演奏会の全貌
1 WFはいったい何回演奏会を指揮したのか
2 WFは何人の作曲家の作品を何曲、何回演奏したのか
3 WFはどのオーケストラを何回指揮したのか
Ⅱ 誰のどの作品をいつ演奏したか
Ⅲ 「戦争」はフルトヴェングラーに何をもたらしたのか
1 ユダヤ人作曲家の演奏記録
2「戦争」はWFのプログラムにどんな影響を与えたか
3 BPO演奏会のソリストに見る第2 次世界大戦の影響
Ⅳ フルトヴェングラーは「同時代音楽の擁護者」か
1 WFは同時代音楽の「擁護者」だったのか
2 WFの同時代作曲家の演奏記録を見る
3 ナチス系の同時代作曲家の演奏記録を見る
Ⅴ フルトヴェングラーはどの国の作曲家の作品を指揮したのか
Ⅵ フルトヴェングラーはどんなソリストと共演していたのか
1 WFが共演したピアニスト、ヴァイオリニスト、チェリスト
2 ユダヤ人演奏家との共演記録を見る
3 ユダヤ人以外の主な共演者たち
Ⅶ フルトヴェングラーのオペラ・舞台上演、および室内楽
その他、プログラムに関する余談
《著者略歴》
山下 山人(ヤマシタ ヤマト)
1958 年山口県生まれ。早稲田大学卒業。情報通信サービスで主に管理・経理業務を担当。中学時代からクラシックを聞き始める。おもに「常識を外れたクセのある音楽家」に魅かれ、特にフルトヴェングラーの音楽をこよなく愛す。
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